コンデンサーマイクが在庫不足で買えないからマイクプリアンプを買った話
アシアル情報教育研究所 所長の岡本雄樹です。
3月末からオンラインセミナーを開催しているのですが、機材や収録ノウハウが不足しており、色々と情報収集をしたり、ありものの機材を組み合わせて実験をしております。この分野は素人なのですが、私の試行錯誤が誰かのお役に立てればと思い、記事を書きました。
さて先日、「Netflix」が「自宅環境で吹替のセリフを収録する」という記事を公開して、ネット上で人気を博しているようです。
自宅環境で吹替のセリフを収録する Netflix | パートナーヘルプセンター
こういったノウハウを惜しげも無くネットで公開した「Netflix」は素晴らしいと思います。自宅で収録するためのコツが載っているので、オンラインセミナーや動画教材作成などでも役に立ちますね。お勧めのコンデンサマイクやオーディオなども紹介されています。
ただ、コンデンサマイクやオーディオインターフェースの在庫が逼迫しており、入手が難しいものも多いです(2020年5月20日現在)。
オーディオテクニカの「AT2020USB+」とか、Blue Microphonesの「Yeti USBマイク」などのUSB接続できる比較的安価なUSBマイクは既に在庫切れです(たぶんGW前ぐらいから)。コンデンサマイクも1~2万円の庶民に人気のモデルは売り切れです。「Neumann U87ai」とかなら売っているようですが、価格の桁が一つ上がるので手が出ません。
私もXLR接続型のコンデンサマイクが欲しくなってGW辺りに物色してたのですが、1~2万円台のモデルは軒並み在庫切れでした。オーディオテクニカの「AT2035」が欲しいなと思いながら、何度もウオッチしたのですが…
そこで私は 閃きました。
「手持ちのダイナミックマイクを専用のプリアンプに通してイコライザーに掛ければ、音圧も稼げるしノイズも消せるし、ディエッサー機能があればサ行を発音するときに発声しやすい歯擦音(しさつおん)も消せるから、コンデンサマイク無くても戦えるのでは?」
専用のマイクプリアンプは触ったこと無かったのですが、一縷の望みを掛けて買ってみました。
dbx 286s、サウンドハウス価格で約1.7万円。
そこそこのお値段です、AT2020USB+が買える値段です。
おまけにデカい、1Uです。
1Uということは、ラックマウント型のサーバーと同じ幅ということですね。
なお、イコライザーとUSBオーディオインターフェースとダイナミックマイクは既に持っていた物を使っています。
ついでにイコライザーも1Uタイプに変えたくなってきました…
専用のマイクプリアンプを使う理由
音圧を持ち上げるためです。ダイナミックマイクやハンドヘルド型コンデンサーマイクは音圧が低めですが、マイクプリアンプを使えば音圧をガツンと上げられます。ガツンと上げたときに指向性ダイナミックマイクでも階下の音や部屋の外の車の騒音が普通に入ったのには驚きました。
GW前にダイナミックマイクをオーディオインターフェースに接続してオンライン会議やオンラインセミナーをやって課題に感じたのが「音圧不足」。正確には、自分の使っているオーディオインターフェースのマイクプリアンプが弱いのが原因なのですが、他の人よりも声が少し小さくなってしまうという問題を抱えていました。
岡本が使っているオーディオインターフェースはUA-4FXという機種なのですが、規定の入力が「-45~-12dBu」のレンジ。そしてマイクの方は「N/D767A」という機種で出力レベルが「-52dB」。dBuとdBの違いを理解していないので間違っていたら申し訳ないのですが、多分、マイクの出力が足りない。カラオケで歌うような大声で喋ればピークまで音圧を持っていけるのですが、そんな声で会議やセミナーをするのは無理、喉が持たない。
そこで、ダイナミックマイクとオーディオインターフェースの間にマイクプリアンプを挟んで音圧を持ち上げることで対応することにしました。また、マイクプリアンプを挟むことによってプリアンプ付属のディエッサーなどを使ったり、イコライザーを更に繋げることも可能となりました。
なお、「音圧足りない問題」は会議やセミナーでは致命的ですが、動画講座を作るケースならソフトウェア的に後で音圧を上げる方法が使えます。
プリアンプの設定
適当に音圧を持ち上げます。ここで限界まで上げるとコンプやエンハンサーを掛けたときにピークを越えて音割れする予感がします。
また、幾つかボタンが付いており、ハイパスのボタンで80Hz以下の周波数の音をブロックしてノイズを減らすこともできます。また、ファンタム電源が必要なコンデンサマイクを使うときには、ファンタム電源のボタンをONにします。
なお、コンプレッサーやディエッサーなどの機能を一時的にOffにしたいときには「PROCESS BYPASS」ボタンを押します。
コンプレッサーの設定
コンプレッサーを上手く活用すると、限界まで音圧を稼いだり、敢えて歪ませたり、色々できるみたいなのですが、まだ使いこなせていないのでOffにして使っています。
コンプレッサーを上手く活用すると、限界まで音圧を稼いだり、敢えて歪ませたり、色々できるみたいなのですが、まだ使いこなせていないのでOffにして使っています。
ディエッサーとエンハンサーとエキスパンダーとアウトプット
ディエッサーは便利、適当に掛けたら音が聞き取りやすくなりました。
エンハンサーでは良い感じに低音を持ち上げたり、高音を強調できます。
エキスパンダーは、まだよく理解できていないのですが、マイクからプリアンプに送られる一定以下の音圧(つまり雑音など)を通さないようにできる仕組みのようです。
アウトプットは、アウトプットです。ここで更に音圧を上げることも可能です。
イコライザー
偶然、家に転がっていたイコライザーをプリアンプとオーディオインターフェースの間に接続しました。ペダルスイッチでOn/Offできます。低音と高音をバッサリカットする設定にすると、ラジオボイスが作れます。ただ、マイクプリアンプのエンハンサーで低音と高音をエンハンスするのとは真逆の発想なので、普段はペダルスイッチでOffにしています。
まとめ&補足
- コンデンサマイクの在庫は逼迫しているが、ダイナミックマイクやハンドヘルド型コンデンサマイクは入手しやすい。
- マイクプリアンプを買えばダイナミックマイクでも音圧を確保したり音をアナログ加工できるので、セミナー用途では十分戦えそう。
- でも、ダイナミックマイクは指向性がシビアなので、セミナー中に口元からズレると音圧がガクッと落ちる。
- プリアンプをイコライザーにつなげば、ノイズが入りやすい周波数帯をバッサリ切ることが可能。
- このプリアンプは1Uサイズでデカいしソコソコのお値段なので、どうしても自宅での録音・配信環境を改善したい人向き。
追伸:
この記事が好評だったら「Neumann U87ai」とは申しませんが、dbxのコンプレッサーとイコライザーとコンデンサマイクとマイクスタンドとショックマウント等をアシアルで買って貰おうと思います。
20200525追記①:音の検証動画をYoutubeにアップロードしました
20200525追記②
100V電源駆動で+60dBできるオーディオインターフェースを所有するアシアル社員から伝言を預かりました。
「アンプを使うと音圧は確保できるんですがノイズが目立つので、先に マイクスタンドの用意にも触れておいた方が良いと思います……オフマイクで喋ってる人結構いるので 」
マイクスタンド重要です。ブログ記事では触れていませんでしたが、私も使っています。以前、オンラインセミナーでダイナミックマイクを手持ち(ハンドヘルド)で行ったのですが、良いポジションに持ち続けてセミナーを行うのは結構辛いです。
なお、マイクを口元にガッツリ近づけて使うことを「オンマイク」、遠ざけて使うことを「オフマイク」と呼びます。どちらもメリットデメリットありますが、オフマイクだと環境ノイズを拾いやすくなります。