「エンジニア向けAI活用研修」を実施しました
エンジニアの又川(@n_matagawa)です。
2020年2月からほとんどのメンバがフルリモートで働いているアシアルですが、定 期的にほぼ全メンバが集まる機会があり、今回は 2023年7月12日(水) に新宿のレンタルスペースで数回目の「ワンデーオフィス」が開催されました。
その中の1コマ(90分)で「エンジニア向けAI活用研修」を実施したので内容を紹介します。
経緯
アシアルには元々AI開発チームが存在しましたが、2023年3月に GPT-4 がリリースされたあたりから「AI開発>AI活用」の図式が「AI開発<AI活用」に爆発的に傾いたため、2023年6月にAI活用チームが発足しました。
AI活用チームでは「次世代のAIツールに備えて、全てのメンバが現世代の AI ツールを使いこなせるようにする」ことを目標として、
- イベントへの参加
- 公開事例の調査
- コスト問題・セキュリティ問題の整理
- 社内施策の立案・実行
などを行っていました。
AI活用は全職域(PM職、デザイナー職、…)に及びますが、今回はまずエンジニア職のメンバに絞って「エンジニア向けAI活用研修」を実施し、AI活用を体験・実感してもらいました。
研修内容
GPT-4 ベースの AI ツール(ChatGPT Plus、Bing AI、Copilot Chat 等)を使ってラーメンタイマー(3分タイマー)を作ってもらいました。
今回は参加者のほぼ全員に ChatGPT Plus を支給しました。
必須要件
必須要件として与えたのは以下の条件です。
- 形態
- Web ページ (SPA)
- フレームワーク
- React, Vue, Angular, Svelte, VanillaJS なんでも OK です。
- 自信のある人は使ったことのないフレームワークを使用してください。
- React, Vue, Angular, Svelte, VanillaJS なんでも OK です。
- 機能
- タイマー表示がある。
- 表示形式は「分:秒」とする。(例: 「2:43」)
- 初期値は「3:00」とする。
- 「Reset」ボタンがある。
- 押下するとタイマー表示が「3:00」に戻り、カウントダウンが止まる。
- 「Start」ボタンがある。
- 押下するとカウントダウンが始まる。
- タイマー表示が「0:00」になった時にタイマー表示が点滅する。
- 「Speed Up」ボタンがある。
- 押下するとカウントダウンの速度が100倍になる。
- タイマー表示がある。
オプション要件
必須要件が早く実装できた人向けに以下の4つのオプション要件を用意しました。
制限時間
制限時間はオプション要件込みで60分としました。
その他のレギュレーション
そもそも制限時間が短いので、必須要件+オプション要件を実装することさえできれば AI でも手作業でもどんな手を使っても良い(実務でもそうである)という考え方でレギュレーションを設定しました。具体的には、
- AI の出力したコードを手作業で修正する行為は全面的にOKとしました。
- AI が紹介したライブラリを利用する行為もOKとしました。
研修結果
エンジニア、PM、営業、デザイナー、CEOなど幅広い職種から20名強が参加しました。
雰囲気
メンバ同士が話し合いながら課題を仕上げていく様子を想像していましたが、作業タイム(60分)開始と同時に試験会場の様相となりました。スタッフ(主催)として参加者の PC 画面を観察していましたが、GPT-4 から送られてくる回答を読むことに集中しているメンバが多い印象でした。
GPT-4 をはじめとする対話型AIの研修・ワークショップでは、AIと話すのに忙しくてスタッフと話す暇がないという特殊な状況が生まれることが分かりました。参加者には終始話しかけにくい状態でした。今まで私が参加してきた研修・ワークショップでは見たことのない光景でした。
必須要件の実装状況
「Speed Up」ボタンの実装で詰まる参加者が多く見られました。これは私が課題に意図的に仕掛けた罠によるものです。
- 「必須要件を上から1個ずつ GPT-4 に伝える」というアプローチを取ると、「Speed Up」ボタンの実装の段階で急激に設計が変わるため、GPT-4 が良いコードを書いてくれなくなります。
- 一方で「必須要件を全部まとめて GPT-4 に伝える」というアプローチを取ると、最初から「Speed Up」ボタンの存在を前提に設計が始まるため、GPT-4 が良いコードを書いてくれます。
ここが研修で最も個人差が出た箇所でした。早い人は後者のアプローチを取っており、4分で実装が完了していました。
オプション要件の実装状況
1つ実装できた人から4つ全て実装できた人まで、幅広く分かれました。
4つ目の「古い数字から新しい数字にスクロール」のオプション要件はアニメーションを含むため非常に難しいのですが、早い人は55分で必須要件+オプション要件4つをクリアしていました。
よく報告された事象
- ChatGPT の GPT-4 モデルの「3時間あたり25リクエストまで」制限に引っかかってしまい、GPT-3.5 の使用を余儀なくされた。
- 多くの人が陥っていました。
- しかしオプション要件4つを全てクリアした人は GPT-4 への25リクエストで大枠を仕上げ、細かい部分は GPT-3.5 に修正させることでカバーしていました。研修や実務でエンジニアに GPT-4 を使用してもらう際のヒントとなるでしょう。
- GPT-4 と会話を進めるうちに徐々に GPT-4 の提示するコードが壊れ始め、修正指示も効かなくなってしまった。
- こちらも多くの人が手を挙げまし た。
- ChatGPT には「過去の質問を編集することで会話を巻き戻して分岐させる」機能がありますが、本質的な解決策ではありません。うまく会話を進めないと脱線します。
成果発表
作業タイム終了後に成果発表の時間を15〜20分ほど取りました。
AI活用研修では綺麗な成果物が仕上がりにくいためか、立候補してくれたのは1人でした。進捗状況を元に残りの3人を指名し、計4人に「どこまでクリアできたか」「どのような問題が発生したか」「どのように解決したか」を説明してもらいました。
成果発表の時間に収まらなかった人の分の作品は Slack にスクリーンショットを貼ってもらうことで回収しました。
おわりに
以上、今回実施した「エンジニア向けAI活用研修」のレポートでした。
社内研修を検討している企業の方々や、社外でのワークショップ・勉強会を開催しようとしている方々の参考になれば幸いです。
アシアルでは「次世代のAIツールに備えて、全てのメンバが現世代の AI ツールを使いこなせるようにする」という目標に向かって同様の取り組みを続けていく予定です(採用情報)。
ではまた!