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サーバントリーダシップとは?

突然ですが新撰組をご存じでしょうか。幕末の京都にて、だんだら模様の筒袖に刀を携えて市中を闊歩し、倒幕派の志士たちを震え上がらせたあの剣客集団です。ただの浪士組であった彼らが時勢を動かす組織に成長し、歴史のスポットライトを浴びたことは歴史上の痛快事です。

局中法度と呼ばれる厳しい隊規で隊士をまとめ、威圧感で語る局長の近藤勇を真ん中に、鬼の副長土方歳三が傍で目を光らせる、そんなステレオタイプで新撰組は描かれてきました。幼き頃の自分は「強い組織の強いリーダーとはこうあるべきなんだな」と心を躍らせたものです。

ところが、プロジェクトマネジメントの世界で理想とされるリーダーのあり方は少し様相が異なるようです。
今回は、PMI(Project Management Institute)が提唱するリーダーシップの重要な要素の一つ「サーバントリーダーシップ」について紹介しようと思います。

サーバントリーダーシップについて

サーバント(使用人)というより、スチュアード(執事)をイメージすると良いかもしれません。リーダーがチームメンバーの成長と福祉を最優先に考え、彼らをサポートし、権限を委譲し、彼らが最高のパフォーマンスを発揮できるように導くリーダーシップスタイルです。サーバントなリーダーには以下のような資質が求められます。

  • 聴く力:チームメンバーの意見やニーズを積極的に聞き出し、理解しようとする姿勢。
  • 共感:他者の立場や感情を理解し、共感する能力。
  • 治癒力:人々との関係を築き、育て、回復させる能力。
  • 意識:自己認識と状況認識を高め、適切な判断を下すこと。
  • 説得:他者を力で押し付けるのではなく、説得して同意を得る能力。
  • 概念化:ビジョンを持ち、それを実現するための戦略や計画を考える能力。
  • 予見:将来の問題やチャンスを予測し、適切な準備をする能力。
  • 奉仕の精神:チームや組織の利益を個人の利益よりも優先する姿勢。
  • 成長の促進:チームメンバーや関係者の個人的、専門的成長をサポートすること。
  • コミュニティの構築:チームや組織内での強いコミュニティ意識を育む。

どうでしょう、私たちが描いてきた局長や副長の強いリーダー像とは少し違うように見えませんか?

局長や副長がサーバントだったら

サーバントリーダシップを文字で理解することはできました。しかし、具体的に私たちは何をしたら良いのでしょう?ここは思い切って、近藤勇や土方歳三がサーバントリーダシップに徹する人間だったらどう行動するか、を考えてみましょう。

まずは隊規の局中法度。これは局長や副長が決めるのではなく隊士に決めてもらうことでしょう。与えられたルールに従わない隊士も自分たちが決めたルールには従うことをリーダーは知っています。「士道不覚悟」の士道は自分たちで定義させましょう。

といっても、投げただけでは隊士は動きません。王城の治安維持というビジョンを共有しチームのコンセンサスとして掲げることから始めます。そのために自分たちが何をできるかをそれぞれで考え議論していただきます。そこに至るまでのリーディングを試みます。

応募してくる隊士は基本的に志(こころざし)以外は何も持っていません。まずは衣食住を確保して環境を整えることが最優先です。また、隊士の成長は業務の遂行に不可欠です。武芸のみならず、学問や礼法などの外部コンサルティングも検討していきましょう。

最初は隊長による指示やコーチングが必要かもしれませんが、時間が経つにつれ、隊士はそれぞれが関係性を構築し連携し始めることでしょう。結成当初の「成立期・動乱期」から「安定期・遂行期」へと隊は成長していきます。

そうなればしめたもの、局長や隊長がなすべきことは隊士の支援から隊士への権限委譲となっていきます。つまるところ、メンバーが自律的に行動し、最大限に能力を発揮できるような下支えこそがサーバントな局長に求められる姿といえます。

まとめ

歴史の傍観者の立場で思いつくままに好きなことを書いてしまいましたが、新撰組のような軍事的な組織では自立性のみを追求すると統制が効かないリスクの方が大きいでしょう。リーダーシップにも多様な形態があり、サーバントリーダーシップはそのうちの一形態に過ぎません。

マネージャーは、プロジェクトやステークホルダーの状況を鑑みて適切なリーダシップスタイルを確立しなければなりません。その意味で、先人たちの前例は大いに参考になります。また、それらの教訓をまとめたプロジェクトマネジメントの知識体系を積極的に活かしていきたいものです。

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